税務相談室
※法改正により、内容が変更になっている場合があります。
平成21年10月15日発行

贈 与 税(2)

前回の紙面では、住宅取得資金を子供に贈与したときの贈与税対策として、本年1月から施行されている住宅取得資金の贈与の特例(非課税枠500万円)と相続時精算課税制度(非課税枠3,500万円)を紹介しました。今回は前回のテーマに引き続き、この二つ非課税枠の違いを比較し、具体的な対処策を検討したいと思います。

(第35号)

真の意味での非課税枠

住宅取得資金の贈与の特例(非課税枠500万円)は、景気回復を目的とした期間限定の政策減税です。この特例を使っても相続時精算課税制度のようにあとで課税関係が生ずることはありませんので、まずはこちらを優先して使ってください。

見せかけの非課税枠

相続時精算課税制度を使ったとき 相続時精算課税制度の本旨は、この制度の下で生前に贈与した財産については、そのときには贈与税をかけない代わりに、あとで相続税をかけるということです。ですから、この非課税枠を使って本当の意味で税金から解放されるのは、生前に親から贈与された財産を親の相続財産に加えてもなお相続税のかからない人に限られます。ちなみに、ここで「相続税のかからない人」と言うのは、課税される相続財産の額が「5,000万円+法定相続人の数×1,000万円」以下の人のことを言います。

親が長生きすればするほど差が開く!

それでは次に、相続税の計算に際して、相続時精算課税制度を使った人と、これを使わなかった人の場合を比較します。ここで「制度を使った人」と言うのは、親から贈与を受けて住宅を取得した時にその登記名義人になった子供をいい、「これを使わなかった人」と言うのは、住宅を建築あるいは購入したときにはとりあえずその資金を出した親がその登記名義人となり、相続によってこれを取得した子供のことを言います。
まず、制度を使った人の場合は、生前に贈与を受けた額がそのまま相続財産に加えられます。つまり、築後何年経過していようと、常に新築価額で課税されることになります。一方、この制度を使わなかった人の場合は、相続する時の固定資産税評価額で相続財産に加えられます。つまり、経年とともにそれなりに劣化した中古価額で課税されることになりますので、親が長生きすればするほど相続税は安くなります。

わたしならこうする!

それでは、親から住宅取得資金の援助を受けても、「贈与税は払いたくない。」そして「相続税もできるだけ安くしたい。」という二つの要望を同時にかなえるためにはどうしたらいいのでしょう。私なら、住宅の取得時には相続時精算課税制度を使わずに、その取得代金のうち500万円の非課税枠と贈与税の基礎控除(110万円)の合計額(610万円)に見合う共有持分を子供の名義とし、残りは親の共有持分とします。(図では持分計算を簡単にするため、住宅の取得価額の総額を2,440万円としました。)そして、親の共有持分については相続のときにこれを取得します。そうすれば、取得時には贈与税はかかりませんし、相続税もずいぶん安くなります。
もっとも、「いま全てを手中にしないと相続の時にはどうなるか分からない。」という人の場合は、当面の贈与税を避けるために相続時精算課税制度を使わざるを得ないかも知れません。



ハッピーハウス税務相談室
税理士 坂西 史也
 
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