税務相談室
※法改正により、内容が変更になっている場合があります。
平成23年2月15日発行

不動産賃貸業の「法人なり」

(第43号)

税制改正が後押し

昨年暮れに平成23年度の税制改正大綱が発表され、個人に対しては相続税や所得税の税負担を重くする一方、会社に対しては法人税率を引下げて税負担を軽減する方向で改正されることが明らかになりました。   
これまでも個人税制と法人税制の落差を利用して税負担の軽減を図る動きはありましたが、今回の改正によりこの落差はさらに拡大し、個人事業を会社経営に変更する、いわゆる「法人成り」の動きはますます活発になるものと思われます。そこで、今回は、不動産賃貸業における「法人成り」について考えてみます。

どんな会社にするか

不動産賃貸業に関わる会社は2つに大別されます。
一つは、賃貸物件を自ら所有する「不動産所有会社」、他の一つは、オーナーが所有する賃貸物件を管理する「不動産管理会社」です。不動産所有会社においては、賃貸物件とその運用収益のすべてが会社に帰属するので、節税効果は大きく、相続対策としても有効です。
一方、不動産管理会社においては、賃貸収入の数パーセントに過ぎない管理手数料しか会社に帰属しないので、効果は限定的で、相続税対策としても機能しません。
さらに最近では、外部の業者が事実上の管理業務を行っているところに身内の管理会社を重ねて置くことが問題視され、過去に遡って多額の追徴金を課された事例(国税不服審判所裁決事例)が起きています。漫然と不動産管理会社を続けている方は要注意です。

不動産所有会社を作るに際して

不動産所有会社を作るためには、ビルやアパート等の賃貸物件を会社に移管する必要があります。通常であれば、オーナーがこれらの賃貸物件を会社に売却する方法でこれを行いますが、その場合、会社側には登録免許税や不動産取得税が、オーナー側には譲渡所得税がかかります。
これらのコストを最小限に抑えるために、会社に移管するのは建物等の上物だけに限定し、敷地は個人所有のまま会社に賃貸します。
ただし、ここで通常の賃貸借にすると、多額の権利金あるいは地代が認定されますので、これを回避するために契約当事者は協力して「借地権の無償返還の届出書」を提出します。
この届出書の副次的効果として、当該賃貸の用に供している土地の相続税評価に際して、更地価額から借地権相当額(20%)を減額することができます。
 

納税資金を調達する

「相続税を払うために相続した財産を泣く泣く処分した。」という話をよく聞きますが、自分の会社を持つと、次の方法で納税資金を調達することができます。
(1)相続に際して会社から支給される役員死亡退職金を納税資金に充てる。その資金源は、会社が保有する現預金、会社契約に基づく生命保険金、あるいは、会社が融資によって調達した資金です。死亡退職金は、これを支払う側にとっては会社の損金になり、これを受け取る側にとっては、所得税ばかりか、一定額(5百万円×法定相続人の数)までは相続税もかかりません。
(2)オーナー所有の敷地を会社に売却し、その売却代金を相続税の納税資金に充てる。資金源は(1)と同じです。売却先が身内の会社であれば人手に渡るさびしさはありません。
なお、売却に際しては譲渡所得が計算されますが、相続開始後3年10ヶ月以内にする譲渡については「相続税の取得費加算の特例」といって相続税を必要経費にすることができます。
これを使えば、税負担を大幅に軽減することができます。
以上により、本来なら個人が負担すべき相続税を、会社の損金、あるいは、必要経費とし、さらには、支払利息などの資金調達費用まで会社の損金にすることができました。

「法人成り」ソフトなければタダの箱

せっかく法人成りをしても、それを活かす知恵とノーハウがなければ、会社にした意味がありません。相談室は、法人成りをしたい、もっと有効に活用したい、あるいは、不動産管理会社を不動産所有会社に変更したいとお考えの方を支援します。また、これを相続税の観点から検討したいという方のために、改正税法による相続税の試算を行っております。相談はいずれも無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。



ハッピーハウス税務相談室
税理士 坂西 史也
 
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