税務相談室
※法改正により、内容が変更になっている場合があります。
平成23年10月14日発行

常識を覆すようですが!

(第47号)

借金をすれば相続税が安くなる?

貸家も築後10年から15年も経つと修繕工事が必要になってきます。あるオーナーとその資金繰りについて話し合っていたとき、次のような発言がありました。
「借金も少なくなってきたことだし、相続税対策のために、もう一つ借金を作っておきましょうか?」
相続税を心配する人の中には「借金をすれば相続税が安くなる」と思い込んでいる方も多いのですが、その認識は必ずしも正解ではありません。
借金をしなくても修繕のための工事代金を支払えばその分相続財産は減少し、手持ちの預貯金をそれより相続税評価の低い不動産などに置き換えれば、つまり不動産を購入すれば、その分相続財産の評価は縮小しますので相続税は安くなります。一方、借金をしてもそのお金を預貯金とし、あるいはゴールドなど貴金属に変えた状態で相続を迎えると、相続税は安くなりません。

できるだけ借金はしない方がよい。

すでにお分かりのとおり相続税が安くなるかどうかは、お金がどんな使われ方をしたかであって、それが借金で調達された否かは問いません。したがって、金銭的に余裕があるなら借金はできるだけ早く返済し、手持ち資金があるならこれを修繕費の支払いに充てた方が、財務的には健全ですし、無駄な経費を省くこともできます。
ところが、自己資金、つまり修繕を目的とした準備預金(修繕積立金)についてはこれがなかなか溜まらないのがネックです。所得税の計算をする際に、その積立額が「経費」にならないのが一因です。
さらに積み立ての最中に相続が発生すれば、今度はこれに相続税が課されます。相続税を払ってもこれが事業後継者のものになれば幸運ですが、場合によっては他の相続人と分かち合い、最悪の場合は、せっかくの積立金が他の相続人に渡ってしまうこともあります。
修繕積立を「経費」とすることによって効率的に蓄積し、しかもこれを相続財産から切り離す方法はないものでしょうか。

修繕積立金のうまい貯め方

大規模修繕に備えるための預金は、あくまでも財産ですから、その積立額は「費用」になりませんし、相続に際しては相続財産に加えられます。
そこで、会社を設立して、これを会社の財産として蓄積したらどうでしょう。そうすれば、積立金は個人の財産ではありませんので相続財産ではなくなります。
次に、積み立て方法を預貯金ではなく保険料という形で積み立てたらどうでしょう。そうすれば、支払った保険料を会社の経費(損金)にすることができます。
この節税策のポイントは、大規模修繕工事の時期をあらかじめ想定し、この時期に合わせて(つまり、同一事業年度内に)保険の解約時期(解約返戻金の額がピークになる時期)を設定することです。そうすれば、会社においては益金となる解約返戻金と、損金となる修繕費が相殺されますので課税される所得はなくなります。
もし、運悪く修繕に至る前に相続が発生したらどうなるでしょう。そのときは、会社が死亡保険金を受け取りますので、これを死亡退職金として遺族に支払います。そうすれば、会社においては益金となる受取保険金と、損金となる役員退職金が相殺されますので課税される所得がなくなります。さらに遺族にとってもメリットがあります。死亡退職金については所得税が課税されない代りに相続税が課税されますが、死亡退職金は遺された家族にとって大切な生活の糧になりますので、相続税の非課税枠が設けられています。この非課税枠を有効に使えば、遺族の老後保障と会社の節税という二つの恩恵が同時に受けられます。

会社や保険の活用法については、これ以外にも紙面で語りつくせない部分が多々あります。具体的な事例に際してはご遠慮なく相談室にご相談ください。



ハッピーハウス税務相談室
税理士 坂西 史也
 
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